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不動産相続は悩みの種…?
相続が起こって、遺産の中に不動産があることでお困りではないでしょうか。
国税庁が公表している「令和5年分 相続税の申告実績の概要」※によると、相続財産の約30%が土地や家屋といった不動産ですから、不動産の相続に直面する可能性は比較的高いといえます。
ただ、遺産分割を行うのに際して不動産の取扱いをめぐって対立が生じ、話し合いが進まない原因となってしまうことも少なくありません。
故人がお持ちだった大切な不動産ですから、揉め事の種になってしまうのはできれば避けたいですよね。
ここでは、不動産のある相続が揉めやすい理由と、不動産の分け方にはどのような方法があるのか、具体的な遺産分割の流れなどをご説明いたします。
※出典:国税庁ホームページ 令和5年分 相続税の申告実績の概要
遺産分割とは
相続が発生した際、遺言がある場合は原則として遺言に沿って相続を行います。
一方遺言がなかった場合に行うことになるのが、遺産分割です。
遺産分割では、法律によって定められた相続人(法定相続人)全員で、故人の遺した財産(遺産)をどのように分けるか、話し合いを行います。
話し合いを成立させるには、相続人全員が納得して、合意する必要があります。
遺産分割が成立しなければ、遺産を相続することはできません。
遺産分割の大まかな流れとしては、以下のようになります。
①法定相続人と相続財産を確定させる(相続人・相続財産調査)
↓
②相続人全員で話し合いを行う(遺産分割協議)
↓
③話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをする
↓
④調停が不成立になった場合は、遺産分割審判に移行
不動産のある相続は、なぜ揉めやすいのか
遺産に不動産がある相続では、相続トラブルが発生しやすい傾向があります。
特に、「遺産は実家の不動産のみ」など不動産以外にめぼしい財産がなかったり、不動産が非常に高額の物件であったり、または故人が収益物件を所有していたりすると、紛争が起こる可能性が高くなるといえます。
どうしてトラブルが起こりやすいのか、その理由として、以下の2点が挙げられます。
◎理由1:不動産の分割方法をめぐって意見の対立が生じる
不動産はそのままの状態では、現金のように物理的な分割が簡単にはできませんから、そもそも、公平に分けるということが難しい財産といえます。
加えて、遺産が土地や建物である場合には、相続人の故郷などであるために感情的に思い入れがあったり、現実的に今も一部の相続人が住んでいたりと、各相続人に様々な立場や思惑があることが少なくなく、これらの各相続人の立場や思惑が原因となって、不動産をどのように相続するのかについて相続人間で意見の対立が起こり、この意見対立が相続トラブルに発展することになります。
◎理由2:不動産価額の評価方法をめぐって意見の対立が生じる
遺産分割における不動産価額の評価方法には固定資産評価、路線価評価、不動産会社による査定、不動産鑑定士による評価など複数の方法があります。
不動産は遺産全体の中でも価値的に大きな割合を占めることが一般的ですので、不動産の価額をどの方法を用いて評価するかによって、相続人が手にできる遺産の額に大きな違いが出てしまいます。
そのため各相続人が自分に有利な評価額を主張してしまい、どの評価額を採用するか意見が割れやすく、この不動産評価額の意見の対立が相続トラブルに発展することになります。
不動産の遺産分割の方法
遺産分割において不動産を分ける方法は、大きく分けて4つあります。
現物分割
不動産そのものを、例えば一つの土地を分筆して分けて、それぞれの土地を各相続人が単独で取得する方法です。
メリット
・手続が比較的シンプル
・各相続人に不動産に対する思い入れがある場合に有効
デメリット
・建物や、建物のある土地など現物分割が難しい場合が多い
・相続人全員が納得できる公平な分割が難しい場合がある
代償分割
特定の相続人が不動産を単独取得し、その対価として他の相続人に対して当該不動産の価額における相続分相当の金銭(代償金)を支払う方法です。
メリット
・不動産を取得したい相続人がいる、または住み続けたい相続人がいる場合に有効
・物理的に分けることがないので、不動産の資産価値を維持できる
デメリット
・不動産を取得する相続人に代償金の支払能力が必要である
・不動産の評価額を正確に算定する必要がある
換価分割
不動産を売却し、その売却代金を相続人間で分ける方法です。
メリット
・現金化することにより、相続人全員に明確に平等に分けられる
・相続税の納税資金対策として有効
デメリット
・売却に時間がかかる場合がある
・売却価格によっては不本意な結果となる可能性がある
・売却時に不動産業者に対する仲介手数料や、売却による利益について譲渡所得税が発生する
共有分割
法律で定められた相続分や話し合いで定めた相続分に応じて、複数の相続人で共有して相続する方法です。
メリット
・現物分割、代償分割、換価分割の各方法での遺産分割が難しい場合に、遺産分割を完了させることができる
デメリット
・共有状態となった不動産の管理や利用に関して、共有者間でトラブルが発生する可能性がある
・単に問題の先送りであり、次の相続が発生したときなど将来的に再び紛争の種となる
不動産がある場合の遺産分割協議の流れ
故人が遺言を遺しておらず、相続人間で遺産分割協議を行う場合の流れについて、遺産に不動産が含まれている場合に留意しながらご説明いたします。
相続人調査
遺産分割は法定相続人全員で行う必要があります。
そのためにまず、相続人の範囲を確定させなければなりません。
相続人調査を実施しないまま遺産分割を行ってしまい、後日他に相続人がいることが判明した場合には、その遺産分割は無効となり、遺産分割のやり直しをしなければならなくなる可能性があります。
相続人調査に際しては、まず、故人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本、原戸籍謄本)を揃え、被相続人の婚姻・親子・兄弟姉妹関係を明らかにします。
被相続人に離婚・再婚歴があったり、異父母兄弟がいたり、養子縁組をしていたりする場合や、代襲相続が発生している場合なども、順を追って戸籍を取得し確認します。
家系図(相続関係図)を作成するとわかりやすいでしょう。
相続人が確定出来たら、実際の相続手続の際に必要となりますので、相続人全員の現在の戸籍謄本も取得しておきましょう。
各相続人の住所地を確認したい場合は戸籍の附票も一緒に請求します。
相続財産調査
次に、遺産分割の対象となる相続財産を確定させます。
被相続人が遺した不動産や預貯金などのプラスの財産と、借金やローンなどのマイナスの財産の両方について、どのようなものが、どれだけあるのか確認を行います。
まず、被相続人の遺品の中から、手掛かりとなる権利書(登記識別情報通知や登記済証)や通帳、証書、郵便物などを探し出します。
それをもとに、市区町村役場や金融機関等に必要に応じて照会、証明書類の請求をします。
例えば、不動産については、毎年役所より送られてくる固定資産税の課税明細書などを確認し、法務局で不動産登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すれば、所有者や抵当権の設定の有無などが確認できます。
預貯金や、保険、株式、投資信託などの金融資産については、銀行や証券会社などに、残高証明書や取引明細書など相続財産の具体的内容が分かる書類の発行を依頼します。
遺産分割協議
法定相続人と相続財産を確定させたら、相続人全員で遺産分割の話し合いを行います。
相続財産に不動産が含まれる場合は、ここで不動産の分割方法を決めることになります。
そして、不動産の分割方法を決めるにあたって重要となるのが不動産の評価額をどのように定めるのかということです。
前述のとおり、不動産の評価方法には、固定資産評価額による評価、路線価による評価、不動産会社による査定、不動産鑑定士による評価など、複数の方法があります。
この不動産評価額の算定は遺産分割の結果全体に大きく影響することから、不動産のある遺産分割において重要なポイントの一つといえるので、それぞれの方法による評価額を比較検討して、適正な価額となるよう相続人間で協議することが必要となるでしょう。
遺産分割についての話し合いがまとまり、相続人全員による合意に至れば、遺産分割協議書を作成して合意の内容を書面に残します。
遺産分割協議書は、不動産や預貯金等の相続手続の際の必要書類となります。
また遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印での捺印が必要となることから、後日の相続人間の争いを防ぐこともできます。
一方で、もし、相続人間での話し合いがまとまらなかったり、話し合いが難航したりする場合は、遺産分割調停の申立てを検討することになります。
相続手続(相続登記)
遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議書に基づいて、預貯金や金融資産などについて銀行、証券会社等で所定の相続手続を行うことになります。
また、不動産については、不動産の所在地を管轄する法務局へ所有権移転登記の申請(相続登記)を行うことになります。
遺産分割に関して弁護士に相談すべき理由
遺産分割の基本となるのは、相続人間の話し合いです。
一方で、相続の当事者同士で円満に話し合いができ、合意ができれば一番良いのですが、いざ蓋を開けてみるとなかなかそう単純にはいかないのが相続でもあります。当事者同士の話し合いであるからこそ、スムーズにいかない面もあるでしょう。
そこで、遺産分割についてお悩みの際は、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。弁護士へのご相談をお勧めするのには、以下のような実はとても重要な理由があります。
理由1:代理人として協議から裁判手続まですべて行うことができる
遺産分割のご相談は、司法書士や税理士など他の士業の先生も取り扱っていますが、あなたの代理人となって遺産分割協議の場で交渉を行い、さらに遺産分割調停・審判の場においても代理人として活動することができるのは、弁護士だけです。
当事務所にご依頼いただければ、実績豊富な法律の専門家として、あなたのご希望を可能な限り実現するために最も有効な法的主張をすることに努めます。
理由2:相続調査を正確に行うことができる
遺産分割を行う際は、まず相続人と相続財産を確定させる必要がありますが、故人を亡くされたお悲しみ、精神的疲労の中、相続人や相続財産の調査を行うのは、かなり負担の大きい作業です。
しかし遺産分割にあたり大前提となる相続人や相続財産の内容を正確なものにしておかないと、後になって遺産分割のやり直しをしなければならなくなる可能性があります。
また、相続財産の調査の結果によっては、相続放棄(自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に申述する必要があります。)を検討した方がよい場合もあります。
このように、遺産分割において相続人や相続財産の調査は極めて重要なものですが、弁護士は相続人・相続財産調査に精通していますから、この調査作業を正確に行うことができます。
当事務所の相続調査パックをご依頼いただければ、相続人や相続財産の調査を正確に行った上で、調査結果を踏まえた遺産分割の方針のご提案や、問題点についての法的アドバイスについても早期にお伝えすることができます。
理由3:解決までの見通しを立てることができる
いざ遺産分割に臨まれる際、他の相続人と連絡が取れない、相続人が多すぎて話し合いが進まない、意見が対立して話し合いがまとまらない、といったお悩みが出てくることもあると思います。
弁護士は、相続に関するトラブルを熟知していますので、トラブルの原因となっている問題点を見極め、解決までの全体像を見通した上で、どのような解決方法が考えられるかご提案することができます。
協議を続けるべきか、調停を申し立てたほうがスムーズな解決が図れそうか、事案に応じた最適なご提案をさせていただきます。
当事務所の特徴とサポート内容
当事務所では、ご相続の相談については、初回60分を無料とさせていただいております。
遺産分割について、あなたのご不安、お悩みを丁寧にヒアリングさせていただき、それを解消するためにどのような道筋が考えられるか、法律の専門家の視点からご提案させていただきます。
特に当事務所は、相続案件の中でも自宅や収益不動産などの不動産が絡む事案に豊富な経験と実績を有しております。
さらに、相続登記に習熟した司法書士や、相続税申告に精通した税理士と連携し、遺産分割の最初から最後までワンストップでサポートさせていただくことができます。
当事務所では、下記の各種サポートをご用意しております。
◎遺産調査サポート(相続人調査・相続財産調査・遺言調査)
◎遺産分割サポート(遺産分割協議~調停・審判)
◎遺留分侵害額請求サポート(遺留分侵害額請求/被請求の交渉~調停・訴訟)
◎相続手続サポート(相続手続代行)
◎相続放棄・限定承認
どうぞお気軽に、お早めに、ご相談ください。



